【TOKYO PINK】TOKYO PINK FES! Vol.31【渋谷 Spotify O-WEST】

渋谷の夜に、TOKYO PINKが集まった。
ZOCX、MAPA、THE PINK MINDS、絶対少女——大森靖子がプロデューサーを務める四組が一堂に会するこのフェスは、回を重ねるごとにその密度を増している。Vol.31。積み重なった数字の重さを、今日のSpotify O-WESTは静かに引き受けていた。
入場してフロアに立つと、バックステージからざわめきが聞こえてくるような気がした。実際には何も聞こえないのだけれど、この場所に立つといつもそういう予感がある。大森靖子という一人の人間が作り上げた磁場の中に、四組が集まっている。それぞれが、それぞれの女の子の想いを抱えて、それぞれの形で表現している。開演前のフロアはそういう期待をはらんで、ゆっくりと人で埋まっていった。
ZOCXと、椿宝座という記憶
照明が落ちる。「ROL」のイントロが鳴り出し、ZOCXがステージに現れた。その瞬間、フロアの空気が締まった。続く「ZOC実験室」。ゲームの言語で切り取られた孤独と断絶の歌——ZOCXはその泥沼をステージの上に再現してみせる。
そして「flop」「Vibes Vibes」「Tight Gee」——椿宝座の楽曲が続く。このブロックに、世椿玲灯が登場した。

2025年8月に「タンマ」として活動を休止した椿宝座の座長が、今日ここにいる。ZOCXへ移籍した千椿真夢と、世椿玲灯が今日ここで椿宝座の曲を一緒に鳴らす——その光景が持つ意味を、フロアにいた人間はそれぞれの形で受け取っただろう。
「flop」はその中でも特に強烈な一曲だ。絶望が積み重なった末に「変えたい世界それなら僕が世界を名乗るんだ」という宣言が来る。今日はZOCXと世椿玲灯の手で鳴らされるその重さを、フロアはそのまま受け取っていた。

「Vibes Vibes」——BOYSGROUPへの大森靖子提供曲を椿宝座がカバーしたこの曲に、古正寺恵巳と北川すず奈が加わった。パーカー姿でステージに現れた古正寺恵巳の中性的なかっこよさが、この曲の空気にぴったりはまっていた。
世椿玲灯は古正寺恵巳に「弟子にしてください」と毎回頼んでいるという。古正寺はそのたびに断っているが、それでもそう言い続けてもらえるようかっこよく活動し続けたいと語っている。その関係性を知って改めてステージを見ると、古正寺が世椿の隣に立つ景色が少し違って見えた。世椿玲灯の笑顔が、ステージ上でよく見えた。北川とのやりとりも自然で、仲の良さがそのまま出ているような場面だった。

そして「Tight Gee」へ。椿宝座のレパートリーの核心にあったこの曲で、MAPAとTHE PINK MINDSもステージへ合流する。全員が扇子を手に持って揃う——その光景が、このブロックの最後に待っていた。
誰かが去っても、曲は残る。その曲を誰かが歌い続ける——本人がXにポストした通り、世椿玲灯にとってこのTPFへの参加が最後になる。それを知っていたぶん、このブロックの景色はいつもより少し遠くまで見えた気がした。


ねえー、ちゅーして?
「Tight Gee」が終わり、MCへ。この日のMCはみんなでみんなにありがとうを言い合うコーナーだった。世椿玲灯はこう言った。TOKYO PINK FESということで、こんなにたくさんの素敵な仲間に囲まれて、初めましての方も増えて、この場を作ってくださった靖子さんと、これからもっと強く大きくなっていくTOKYO PINKに——ありがとう。ステージの上で感謝が交わされる、あたたかい時間。フロアもその空気に包まれていた。
そのあと、大森から「最近(東出つ輝が)トークコーナーでやりたいって言ってたから」というフリが入る。東出つ輝が「ねーえ」と呼びかけ、フロアが「なーに」と返すと、「きこえない」——だだっこのようにもう一度。「ねーえ」「なーに」、そして「ちゅーして?」。そのまま「チュープリ」のイントロへ流れ込んだ瞬間、空気がほどけた。
歌い出しは苺ユル。その声が客席へ届いた瞬間、フロアの肩の力が抜けるのがわかった。今日のチュープリはZOCX、世椿玲灯、THE PINK MINDS、絶対少女——この夜に集まった全員が揃ってステージに立つ曲になった。アイドルとファンの境界線が溶け出す瞬間を、全員で体当たりで表現していた。

世界で一番幸せなアイドル、その裏側
「チュープリ」が終わり、絶対少女のブロックへ。
思えば、絶対少女がこのステージに初めて立ったのは約2ヶ月前——4月20日、渋谷WWW Xでの「TOKYO PINK FES! Vol.30」だった。あの日は10人のお披露目で、それぞれが全力で、ただそこに立って輝くことに必死だった。あれから絶対少女は、短い時間の中でより大きな会場を経験し、今日この場所に戻ってきた。
それがどういうことかは、ステージを見ればわかる。
オーディション合宿のころから、THE PINK MINDSやZOCX、MAPAは絶対少女にとって頼れる先輩たちだ。憧れであり、目標でもある。今日のこのステージに立つにふさわしいグループになろうと努力している姿勢が、10人のパフォーマンスからにじみ出ている——あの頃に比べて、そういう「覚悟」の色が出てきた。


ステージがピンクに染まる。「世界で一番幸せなアイドル」の照明は、迷いがない。最初の代表曲で王道のアイドルカラーを全力で選んでいく——そのスタンスがこのグループのコンセプトそのものだ。ステージ上で一人ひとりの色が重なり合い、プロデューサー大森靖子が掲げる『全ての女の子を肯定しろ』という言葉を、光の中に具現化していく。曲が終わり、絶対少女がMCで「世界で一番幸せなアイドル」と自己紹介するとき、その言葉はキャッチコピーでもあり、宣言でもあるようだった。


続く「ショートケーキダイブ!」——この日が初披露の楽曲だ。誰も聴いたことのない曲が初めて鳴らされる瞬間というのは、フロアの空気がざわっと変わる。これまでの絶対少女が持っていたふわふわと可愛い雰囲気とは打って変わった、クールでアップテンポなエレクトロサウンド。
驚きと高揚が同時に来た。歌詞には10人シロップカラーの名前が盛り込まれていて、それぞれのシロップパートではそのメンバーのポーズが決まる。絶対少女の十色が歌の中でひとつずつ光る——10人いること、10色あること、その全てが曲の構造に織り込まれた、絶対少女にしかできない楽曲だった。

そして「復讐☆スターライト」。お披露目のころからステージで育ててきたこの曲が、この日0時に配信リリースされた。ずっとライブで聴いてきた曲が今日から音源でも手元に残る——そのことがフロアにいたファンにとってどんな意味を持つか、想像するだけで胸が熱くなる。
10人の”syrup color”がステージを去っていく。フロアの空気がまたすこし変わった。

MAPAという生き物
MAPAが登場する。
前日の6月14日、歌舞伎町大森靖子祭でのステージを経ての今日だ。昨日のあの野外ステージでファンから感動のポストが相次いでいた夜から一日が経ち、今日また彼女たちは立っている。連日の大型ライブでありながら、どこかさらに研ぎ澄まされているように見えた。
「Colorful Maiden」で幕が開いた瞬間、ああ、MAPAのターンが始まったと思った。
3月にリリースされた7thシングルを抱えて仙台・大阪・名古屋を回り、恵比寿LIQUIDROOMでのバンド編成ファイナルまで駆け抜けたMAPAが、今日この曲とステージに上がった。ツアーを経た曲というのは変わる。同じ歌詞でも、ステージを重ねるたびにその言葉の根が深く張っていく。
「変わってしまった私を愛しなおしてよ」というフレーズが今日は違う重さで響くのは、それだけの時間をかけてこの曲を育ててきたからだろう。「1 2 3 4 5 季節を巡ったら やっとわかった」——ツアーを経たMAPAがこう歌うとき、その「やっとわかった」は単なる歌詞ではなくなっている。今のMAPAを、今日のMAPAを、ちゃんと見せてくる。そういう強さがこの曲の入りにあって、フロアがそれを受け取っているのがわかった。

「蒼夜ミルキーロード」へ。深い夜の色の楽曲で、「良い女は傷アリ」と歌い、「涙の向こう側に ぼやけた光の あつまる道」を指し示す。静かで、優しく、どこか遠くを見るような曲だ——と思っていると、不思議なことが起きる。落ち着いているはずなのに、体の中で何かが早まっていく。
歌詞の穏やかさとは裏腹に、鼓動が少しずつ速くなっていく。MAPAが鳴らす音と、そこに乗せられる声の温度が、気づかないうちにこちら側に入り込んでくる。気がつけばフロアの空気は変わっていて、何かが積み上がっていた。


そして「絶対運命ごっこ」。
「絶対的な運命ぶってさ 実際抱きしめあってきてさ」——運命を言い訳にしながら、その実ずっと選び続けていた。「ラクになってよかった」という解放と、「楽しくなかった」という静かな認識。こういう感情の複雑な折り畳み方は、大森靖子にしか書けないものだと思う。
しかしそれをMAPAが歌うとき、ただの大森靖子の曲にはならない。MAPAという体を通ることで言葉が別の質感を帯びて、大森靖子の世界観がMAPAの色に染まりながらどこかへ着地していく。「蒼夜ミルキーロード」で積み上がったものが、この曲でめいっぱい心を揺さぶってくる。もう胸がいっぱいだと思ったところで、最後にただひとこと、「ねえ」と言って——音が、ふっと消える。
夢から覚めたような静寂だった。さっきまで何かの中にいたのに、気づいたら現実に戻っていた。満たされたはずなのに切ない、MAPAらしい終わり方だった。

THE PINK MINDSという選択
THE PINK MINDSがステージに現れる。5人だ。
2ヶ月前、新メンバーが加入して5人体制になった。あの発表のとき、グループが次のフェーズへ動き出したと感じた人は少なくなかったはずだ。そして今日、前日に新衣装を纏ったばかりの5人が、そのまま揃ってこのステージに立っている。
近江環とキュアタカナ——2人がTHE PINK MINDSに加入した経緯は、絶対少女のオーディション合宿にさかのぼる。合宿の場に立ち会っていたのが、THE PINK MINDSのオリジナルメンバーの3人だった。そこで3人の想いに触れ、その熱量に共鳴して加入を決めた。同じ熱さを持って入ってきた2人は、オリジナルメンバー3人がこのグループで積み重ねてきた時間と経験に追いつこうと、いま必死に食らいついている。
グループの外でも、それぞれの挑戦は止まらない。北川すず奈は超☆社会的サンダルのMVに出演し、アイドルとしての枠を自分で広げ続けている。5人でいることと、5人それぞれが個として動き続けること——その両立が、今のTHE PINK MINDSの強度になっている。

「ノーレシピ♡LOVE」から始まるそのブロックには、デビューからここまで積み上げてきた1年半分の密度がある。大森靖子の詞世界と松隈ケンタのサウンドが組み合わさったこのデビュー曲を、5人で鳴らすとまた違う広がりが生まれる。THE PINK MINDSの楽曲はスタジオ音源よりも、ステージの上で聴くほうが本来の輪郭を取り戻す気がして、この曲にその傾向が強い。
「前髪レジスタンス」——前日の歌舞伎町大森靖子祭で町を「かわいい!」の声で埋め尽くした新衣装とともに初披露されたこの曲が、今日のO-WESTのステージにそのまま持ち込まれた。「レジスタンス」というタイトルが指し示す通り、立ち向かう強さがある。その強さの中に、女の子らしさが同居している。その両方が一曲の中に収まっていて、どちらかが打ち消し合うのではなく、むしろ重なることで増幅される。歌詞の中にはグループ名でもある「PINK MIND」という言葉が登場する——女の子らしい強さを、生みの親からもらった自分たちの名前で歌う。これがTHE PINK MINDSの在り方なのだと感じた。

「FINE heART」へ。ヒダカトオルの編曲によるバンドサウンドは、5人の声でまた新たな重さが加わっていた。新曲と既存曲を並べたことで、5人になったこのグループの楽曲の幅と厚みが一度に見えた。
最後に、EP『桃色東京』の11月25日リリースも発表された。全4曲収録、さらに「前髪レジスタンス」は7月6日に先行配信が決定している。歌舞伎町でファンを震撼させた新衣装と新曲が、今日のO-WESTを経て、そのままEPへとつながっていく。
THE PINK MINDSは、8月12日にワンマンライブを控えている。今日と同じ渋谷のO-WESTにて、今度は単独で。これだけのものを短期間で積み上げてきたグループが、過去最大級のステージに向かっていく。大きな挑戦への準備が着実に進んでいることが強く感じられ、ファンの期待も高まる中で、5人はステージをあとにした。

Shuffled PINK
グループの垣根を越えて、それぞれが大切な曲を持ち寄る時間が来た。
「ひらいて」——大森靖子、千椿真夢、海老一陽南、白宙夢チナという顔合わせで披露された。まず海老一陽南が歌い出し、白宙夢チナへと引き継ぐ。二人とも高い歌唱力で、声を震わせながら、ひとつひとつの言葉に重さを乗せて響かせてくる。メッセージが体に入ってくるような入り方だった。2021年の映画主題歌として生まれたこの曲が、今日この場所で、この人たちの声で響く。「ひらいて」という動詞がこの夜に向けられた言葉のように聞こえた。
「①④才」はZOCXに北川すず奈、苺ユル、杏守ココアが加わった編成で。この曲を歌うために今日ここに立っているような緊張と覚悟が、声ににじんでいた。14歳の視点から既成の価値観を拒絶するこの曲の痛みが、それぞれの体を通して手渡されてくる。歌い手にとっての大切さが、ダイレクトに伝わってくるような演奏だった。
「CUTTING EDGE」——東出つ輝、苺ユル、恋檬水メメイがZOCXとともに立つ。ミト(Clammbon)の編曲によるオルタナティブ・ロックの鋭さが、タイトル通りに切れ込んでくる。1番のサビは東出つ輝と恋檬水メメイが、2番では苺ユルと千椿真夢が、それぞれ背中合わせで熱唱した。それぞれがこの曲に向き合う理由を持って、その場に立っていた。だからこその熱量が、ステージから流れてきた。

「非国民的ヒーロー」
最後に全員がステージに戻ってきた。
ZOCX、MAPA、THE PINK MINDS、絶対少女。大森靖子のもとに集まったすべての少女たちが横に並ぶその光景は、毎回のことながら、毎回あたらしい感動がある。この日は3曲まで撮影可能というルールで、各自好きな曲でカメラを向けていたフロアが、この瞬間だけは一斉に動いた。みんな待っていたとばかりに、それぞれの推しメンバーにカメラを向けて、全員集合のステージを残していた。
「非国民的ヒーロー」で、このフェスが幕を引く。社会に認められたヒーローではなく、それでも諦めない者たちの歌。大森靖子が集めた少女たちが横に並んでこの曲を歌うとき、その光景自体がひとつの答えを表しているようにも見える。曲の途中、大森靖子祭のフライヤーがプリントされたポケットティッシュがステージから客席へと投げ込まれた。「ありがとう」という言葉の代わりに、メンバーの手からファンの手へ届けられるもの。フロアのあちこちで手が伸びた。
照明が戻る。余韻の中で拍手が続く。
ZOCXは椿宝座の記憶を引き連れながら、世椿玲灯の笑顔とともに今日だけの景色を作った。MAPAは春のツアーを経てさらに分厚くなったアンサンブルを見せ、THE PINK MINDSは5人になった新しい輪郭を刻み、絶対少女はデビューからわずか2ヶ月でこのステージに立つにふさわしい顔をし始めている。四組+一人がそれぞれ今この瞬間のベストを持ち寄って、同じ夜を作り上げていた。
TOKYO PINKのこの先にあるものが楽しみで仕方ない。そういうライブだった。
【SET LIST】
ZOC実験室
flop
Vibes Vibes
Tight Gee
MC
チュープリ
世界で一番幸せなアイドル
ショートケーキダイブ! ★初披露
復讐☆スターライト
Colorful Maiden
蒼夜ミルキーロード
絶対運命ごっこ
ノーレシピ♡LOVE
前髪レジスタンス
FINE heART
ひらいて
①④才
CUTTING EDGE
MC(告知・集合写真)
EN. 非国民的ヒーロー
【ライブ情報】

ZOCX「そのかわいいに用はないツアー」開催中
2026年7月10日(金) 北海道・札幌 PENNY LANE 24
開場18:15 / 開演19:00
終演後特典会実施予定
チケット:一般発売中(残りわずか)
→ https://eplus.jp/sf/detail/4248240001-P0030014P021001?P1=0175
2026年7月12日(日) 宮城・仙台 darwin
開場16:15 / 開演17:00
終演後特典会実施予定
チケット:一般発売中(残りわずか)
→ https://eplus.jp/sf/detail/4248240001-P0030015P021001?P1=0175
2026年7月16日(木) 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
ツアーファイナル
開場18:00 / 開演19:00
通常チケット ¥5,000(+1D) / 学割チケット ¥3,000(+1D・要学生証)
チケット:一般発売中
→ https://eplus.jp/sf/detail/4248240001-P0030016P021001?P1=0175

THE PINK MINDS 新体制ワンマン「桃色レジスタンス」
コンサート、音楽祭
- 日時: 2026年8月12日(水) OPEN 18:45 / START 19:30
- 会場: 渋谷Spotify O-WEST
- チケット: 一般発売 2026年7月3日22:00〜8月11日23:59
- カメコチケット ¥8,000
- 通常チケット ¥4,000
- 18歳以下チケット ¥2,000
- お友達チケット ¥3,000
- チケット購入・詳細: https://t.co/QK8AXQbgow
- 券種解説動画: https://www.youtube.com/watch?v=NlBtQSiDY2I

2026/7/10(金) 「MAD SUMMMER 600」
開場 18:15 / 開演 19:00
チケット:前売 ¥4,000 / 当日 ¥4,500(各+1D)
会場:新宿LOFT
詳細:https://madparty.tokyo/schedule/29078

2026/9/13(日) 「ALL MAD PARTY - MAPA全曲ライブ -」
開場 16:30 / 開演 17:30
チケット:全自由 ¥5,500(+1D)
会場:浅草花劇場
詳細:https://madparty.tokyo/schedule/29080